春風亭昇々、祝! 真打昇進披露、東京ラストナイト
2021年12月8日(水)、ユーロライブで開かれた「ソーゾーシー 新作ネタ下ろし JAPAN TOUR 2021」へ。
落語家の春風亭昇々、瀧川鯉八、立川吉笑、浪曲師の玉川太福の4人による創作話芸ユニット「ソーゾーシー」。その2021年公演の東京ラスト。ということは、春風亭昇々、祝! 真打昇進披露の東京ラストでもあった。
オール新作ネタ下ろしなので、サゲまで含めた内容は今回書いていません。タイトルもまだ明らかにされていないホッカホカの新作、そのサワリです。
▼公演情報
◯出演者:立川吉笑、瀧川鯉八、玉川太福、玉川みね子、春風亭昇々
◯開催日:12月8日(水)
◯開演:19:30〜
◯料金:全席指定3,800円
◯会場:ユーロライブ
▼プログラム内容
〈1〉オープニングトーク
〈2〉立川吉笑
〈3〉瀧川鯉八
〈4〉玉川太福
〈5〉春風亭昇々
〈6〉エンディングトーク
オープニングトーク
吉笑さんが文藝春秋に依頼され、文芸誌『文學界』2022年1月号にエッセイを寄稿した。テーマは「笑ってはいけない?」。吉笑さんが学生時代につきあっていた彼女に二股かけられた実話がベースの2,000字のエッセイ。
タイトルは『潮』。吉笑さんが悩みに悩んで書いたという実録下ネタ青春純文エッセイ、とのこと。
もうひとつ。ソーゾーシー2021Tシャツの、とくにネイビーの在庫が減らなくて困ってるとのこと。販売サイトで鯉八さん着画のベージュは順調に売れているので、その露出の方法に問題があったのかも。
次回からは合議制ではなく自分が決めるから、と鯉八さん。
『立川吉笑』落語のあらすじ&感想
冬の大阪。ここ大阪は火事が早い。つまり類焼が怖い。もし類焼しそうとなれば、商売の品や家財道具を店や家から運び出しておかなくてはならない。これが鉄則。
ある大阪の商家の主人が「伝令組」というシステムを考えた。これまでは、店の奉公人が店から火事の現場まで往復し、主人と番頭にその現場の様子を伝えていた。これでは、その奉公人の走力に限界があるので時間がかかる。
「伝令組」というのは三人一組。三人いっしょにスタートするが、一人目は1/3あたりで止まって待機し、体力の復活を図る。二人目は2/3あたりで止まって待機。
三人目だけが、実際に火事の現場まで行って、その様子をアタマのなかに入れて、Uターン。帰りの1/3あたりで待っている二人目に火事の様子を伝令。二人目は2/3あたりで待っている一人目に伝令する。というシステム。
早速、本当に火事が起きた。どうやら船場あたりが燃えているらしい。主人は三人一組の「伝令組」を計四組走らせた。一人が帰ってきて報告する。
「船場は焼け野原になっている。昔の焼き討ちの恨みで、比叡山延暦寺の坊主が二万人の軍勢で攻めてきている」と言う。延暦寺の坊さんは二百人くらいしかいない。どうもおかしい。
次の伝令が帰ってきて報告。「船場の呉服町が燃えてる。でも、夏の着物を一斉に虫干ししていたところにタバコの火が移って燃えているだけだ」と言う。
三番目と四番目も帰ってきて報告するが、それぞれ言うことがちょっとずつ違う。。
伝令の報告が次第に複雑になり、ラストは入れ子構造に。聴く者を何度か裏切るその火事の様子がとても面白い。それにしても吉笑さんの口跡の見事なこと! この噺、情報量が多いが、スピーディな口跡があればこそだ。
伝令のシステムを説明するのに、両手の人差し指を向かい合わせて指人形がコミュニケーションするシーンとして描いていたのが、面白く、秀逸。
言葉を必ず尻上がりに話す伝令が出てきて、これがどうにも癇に障ってスパイシーで笑える。ここにもちゃんとオチがある。練りに練られた作品。
『瀧川鯉八』落語のあらすじ&感想
「ご飯残したら、お百姓さん、泣く?」と聞く女。
「泣く」と男が答える。
「それって窮屈だよね。(ご飯残すなって)もう脅しだな」と女。
「やっぱ泣かない」と男。
「でも(お百姓さんには)ハートで生きてほしい」と女。
「やっぱ泣く」と男。
やがて明らかになってくるが、男は米づくり農家であり、嫁を探しに東京にやってきていて、女はその候補らしい。
「泣く」「泣かない」のキャッチボールの挙げ句「(ご飯残しても)なんとも思わない。そんなに丹精込めてない」と男。「あ〜、すっきりしない」と女。
ワンテーマを突き詰める鯉八さんならではの作品。最初、観客には最小限の情報しか与えられず、ヴェールが少しずつはがれていくかのように、設定が明らかになってきて、その頃にはもう会話もヒートアップしている、という構造。
ミニマルなセリフが次第に饒舌になって畳み掛けられる様は、鯉八さんだけの落語世界で、またしてもスリリング。
そのヒートアップは女だけのもの。男はそれについていくのに精一杯。妄想を膨らます女のロマンチストぶりに、男はいつも振り回されるらしい。
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『玉川太福』浪曲のあらすじ&感想
「羊の毛刈り世界選手権」に乗り込んで世界一を目指す、井の頭動物公園・三上の汗と涙の物語。
「メ〜、メ〜」と鳴いて嫌がる羊をつかまえて座らせ、全身の毛を刈るスピードを競う。そのテクニックを完全のモノにした三上。羊を前にした練習のおしまいには、三上の師匠が年月をかけて用意した練習が待っていた。
選手権はニュージーランドで行われる。日本人に優勝をさらわれたくはないだろう。羊の皮をかぶったニュージーランドの男が、羊のなかに紛れ込んでいるかもしれない。
師匠は、おもむろに服を脱いだ。。
まさかの「羊の毛刈り浪曲」! でも太福さんは浪曲の枠組みからとっくにはみ出した人なので、いまさら驚くには及ばないのかもしれない。
たとえば白鳥師匠がこういう落語をつくっても驚かないだろうから。そもそもつくらないか、ということもありますが。
羊の毛刈りシーンは太福さんの大きなカラダを活かしたダイナミックなアクションで、ここが最大の観どころ。ダイナミックなアクションが浪曲の観どころというのも、やっぱりすごいか。
これまでにないロックな浪曲。
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『春風亭昇々』落語のあらすじ&感想
早朝「ラジオ深夜便」のDJ、ヴィッキーさんが放送を終えて局を出ようとしたところで、出待ちをしていた小学生の男の子につかまった。
男の子は番組に何度もメールを出しているが、ヴィッキーさんは読んでくれないと抗議。ヴィッキーさんはしかたなく、その場でメールを読んで男の子の悩みに答えることにした。
そのメールは「大人の恋を知りたい」というものだった。「勉強して、きちんとした大人になったら、大人の恋ができるから」とヴィッキーさん。
男の子は「ネットで調べたやつだ」と納得しない。そばで見て笑っていた守衛もこのやりとりに巻き込まれる。
やがて男の子が明かす。「小さい頃、お父さんは大人の恋をして、家を出ていったんだ」。だから「大人の恋を知りたい」のだ。。
ここから、あぶない小学生と思われた男の子が、実は純粋な気持ちを持った子供であるということが明かされ、急展開。ラスト、ほろっとさせられた見事なストーリーテリング。
現代の情報社会の真っ只中にいるマセた小学生の描写がとても面白い。エンディングトークで、真打になったが、子供のようにはしゃぎ続けたいと昇々さんは話していたのですが、まさにそのままの小学生だった。
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エンディングトーク
筑前煮をつくって楽屋持ち込んでくれたという玉川みね子師匠も登場。
昇々さんの真打昇進披露、その東京ラストの会だったので、それも祝福しつつ、三本締め。を昇々さんが音頭をとるはずが、吉笑さんが見事なMCぶりで三本締めへ。来年早々にもまたツアーが始まるそうです。
その他の落語ルポと会場アクセス
●ユーロライブ:URL
住所:渋谷区円山町1-5 KINOHAUS 2F
最寄り駅:渋谷駅下車Bunkamura前交差点左折
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