恒例! 人気の落語家たちの競演
2021年9月25日(土)、よみうりホールで開かれた「よってたかって秋らくご’21/21世紀スペシャル寄席ONEDAY 昼の部」へ。
東京の落語ファンが毎回足を運んでしまう恒例の落語会のひとつ、落語の殿堂・よみうりホールでシーズンごとに開かれる夢空間主催「よってたかって 21世紀スペシャル寄席ONEDAY」 。その「秋らくご 昼の部」へ。
ちなみに毎回、昼と夜、どっちに行くべきかで迷う、悩ましい会でもありますよね。
▼公演情報
◯出演者:三遊亭しゅりけん、三遊亭萬橘、柳家喬太郎、春風亭百栄、桃月庵白酒
◯開催日:9月25日(土)
◯開演:18:00〜
◯料金:全席指定4,200円
◯会場:よみうりホール(キャパ1,100席)
▼プログラム内容
〈1〉三遊亭しゅりけん『金明竹』
〈2〉三遊亭萬橘『真田小僧』
〈3〉柳家喬太郎『宿屋の富』
〈4〉春風亭百栄『修学旅行の夜』
〈5〉桃月庵白酒『死神』
柳家喬太郎 『宿屋の富』のあらすじと感想
金のない男が安宿に泊まっていた。宿の亭主は、ひょっとしたら金がないのではないかと疑うが、男は金持ちアピールを繰り返す。一応信じて、ある約束をする。
それは富くじを買ってもらい、もしあたったら半分くださいとのことだった。男は承知し富くじを買うと、なんとそれが大当たり。
男は金はあると余裕を見せてたのに、あまりの取り乱しに、亭主にやっぱり貧乏なんだとバレてしまう。
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喬太郎さん、男が金持ちの自慢話をする度に「えへへ」「あはは」と笑い声を尾ひれにように付けるのですが、その笑い声が次第に不気味なものになるのが可笑しくって。。
一番の聴きどころはやはり、貼り出されている当たり番号「鶴の千三百五十八番」と、自分のもっている富くじの「鶴の千三百五十八番」を何度も見比べて、口にも出して、首をかしげるシーン。
タメにタメてタメて、やっと気づいた男は、まるでニワトリのように絶叫!
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●Profile
芸名/柳家喬太郎(やなぎや きょうたろう)
生年月日/1963年11月30日
出身地/東京都
●芸歴・受賞歴
1989年10月/柳家さん喬に入門。前座名「さん坊」
1993年5月/二ツ目昇進「喬太郎」と改名
1998年/NHK新人演芸大賞落語部門大賞
2000年3月/真打昇進
2005年/国立演芸場花形演芸会大賞
2006年/芸術選奨文部科学大臣新人賞
2014年/落語協会理事に就任
2020年/落語協会常任理事に就任
春風亭百栄 『修学旅行の夜』のあらすじと感想
修学旅行の夜、集まった男子生徒を前に、伊藤が怖い話を披露。「怖かった」「お前、天才だな」ともてはやされる。
「青木もできんの?」「聞かせてよ」と今度は青木の出番。
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青木〉この話、ムッチャ怖いんだよ。おれは怖かったけど、君たちが怖いのかはわからない。
生徒〉いいから早く聞かせろよ。
青木〉なんでおれが怒られんの? そんなふうに言われてあなたは喋れますか?
生徒〉なんだよ。本当はできないんだろ。
青木〉おじさんから聞いた話。本当にあった話、本当にはなかった話、どっちがいいかな?
生徒〉本当の話でいいから。
青木〉この話はタクシーの運転手に聞いた話で…。
生徒〉え、おじさんじゃないのかよ。
青木〉おじさん、昔タクシーの運転手やってたの。みんな知らないの?
「青木、早く聞かせなさい」と教頭先生もやってきた。
青木〉昔、外のトイレのところで『紙~』って言うだよ。紙持ってったら『この紙じゃない』。『どの紙だ?』って聞いたら、えーっと『この髪だ』って。
そう言って青木は目の前の生徒の髪の毛を引っ張った。
生徒〉はあ~⁉こんだけ待たせて、それかよ。お前ヘタだなあ。
伊藤〉いいか、怖い話は話し方ひとつで。。。と声を潜め、急に大声で「どうにでもなるんだ!!」と青木の髪を引っ張った。
青木〉ギャー!!
近くにいた教頭は驚いて自分の頭に手をおいた。
教頭〉いやー、髪引っ張られたらどうしようかと思って。
(と言いながら、思いもよらない行動に出たのですが、ここはヒミツ💘)
生徒たち〉ギャー!!
怖い話を期待する生徒たちと観客の期待は裏切られ続けww、カタルシスは最後までやってこないww
その代わり、教頭というまったく期待されていないキャラの予期せぬ行動が爆笑を呼び起こしてしまうという構成が秀逸。
三人いたら、これ、コントでできます。四千頭身でどうでしょうww もちろん青木は後藤拓実で。
青木はなぜか伊藤に対抗心を持っているようで、それでいて伊藤とは正反対に、話がヘタ。
まわりの生徒たちは、青木が言葉を重ねるほどにイライラが募る。
笑いながら、あ~、この感じ、わかるなあ、と思って聴いている観客は、稀代の語り手、百栄名人の術中にすでにハマっているのであります。
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桃月庵白酒 『死神』のあらすじと感想
生きることがイヤになった男が死んでしまおうと思っていたところに、痩せて老いさらばえた死神が現れた。「お前にはまだ寿命がある」「医者になれ。儲ける方法を教えてやる」と男を説得。
男のもとには、主人が病で寝込んでいる大店の奉公人が詰めかけ、男は大儲け。。が、死神の指示を守らなかった男の運命は、やがて風前の灯に。。
『死神』の詳しいあらすじは、こちらをご覧ください。
冒頭「死にてえなあ。老衰が一番いいんだよなあ。小さん、うまくやったな」と男がつぶやくところからはじまる白酒さんの『死神』はちっとも怖くない爆笑落語。
死神の造形が面白い。血色が良くって丸っこい死神。
「らしくない」という男に「そりゃ圓生の死神だろ。いま多様性だから」と死神。
性格も陰気ではなく「おれといっしょに生きよう」とあっけらかんと明るく前向き。
死神が呪文を男に教えるシーン。妙にもったいぶっているので男はしびれを切らして言う「早く話せよ。百栄か、てめえは」。ここはこの日のアドリブ。さすが当意即妙の白酒さんです。
もうひとつ、その呪文の文句自体も「あじゃらかもくれん総裁選、本当は嫌がらせで出たんじゃないですか」と時節柄の白酒流ww
ラスト、死神にズラリとロウソクが並んだところへ引き釣りこまれるシーンで、男がポロリ「ここら辺は(従来の)落語通りだな」。ここも大笑いww
独自のセンスで笑いの少ない噺を滑稽噺に変えてしまうことができる、白酒さんならではの、陽気な!『死神』。
まとめ
どんな噺でもゼッタイに笑わせずにはおれない白酒師匠のスタンスとセンスには、もう脱帽です。そういえば、今年まだ『松曳き』を聴いていないぞ。聴きてえ〜。
百栄師匠のストーリーテリングと語りの上手さにも参りましたww
●よみうりホール:URL
住所:東京都千代田区有楽町1-11-1 読売会館7階
最寄り駅:東京メトロ有楽町線有楽町駅よりD4・D6出口
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