【落語会感想】柳家喬太郎『鰍沢 零』・三遊亭白鳥『鬼コロ沢』・入船亭扇辰の鰍沢祭(21.8)

俺のカジカザワ 落語会感想
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古典落語名作、扇辰『鰍沢』を喬太郎・白鳥の新作で挟む、この夏のナイス企画

2021年8月21日(土)、霞が関にあるイイノホールで開かれた「俺のカジカザワ」へ。

俺のカジカザワ

残暑のさなか、『鰍沢』2題で背筋を凍らせ、ラスト白鳥でほぐす

今年の夏の落語会でイチバン楽しみにしていた落語会「俺のカジカザワ」。

極寒の甲州鰍沢、金に目がくらんだ女が旅の男を殺そうとする三遊亭圓朝作のミステリー『鰍沢』。この名作をめぐる、三人の落語会。暑い夏に真冬の噺『鰍沢』なのは、観客の背筋を凍らして少し涼しくしてあげようという意図か。。。

一席目は柳家喬太郎。『鰍沢』の前日譚である自作の新作落語『鰍沢 零』。
二席目は入船亭扇辰。待ってました! 圓朝の古典落語名作『鰍沢』。
三席目は三遊亭白鳥。『鰍沢』を下敷きにして描くのは、なんと落語界の人間模様『鬼コロ沢』。もちろん新作。

なんともしびれるラインナップ!

2015年にも今回と同じらくご@座で「鰍沢 零・壱・弐」として開催していて、その際の一席目と二席目は、演者・演目とも今回と同じ。三席目は柳家小満んによる河竹黙阿弥作の『鰍沢続編』から、今回は白鳥の新作『鬼コロ沢』に入れ替わった。

会場には着物姿の女性も多く、なんだか華やいだ雰囲気でありながら、早くも「聴くぞ」という雰囲気に満ちている。

扇辰門下、辰ぢろの開口一番『手紙無筆』に続き、いよいよ柳家喬太郎登場。

俺のカジカザワの内容

公演情報
出演者:柳家喬太郎・入船亭扇辰・三遊亭白鳥
開催日:8月21日(土)
開演:18:30〜
料金:全席指定4,500円
会場:イイノホール(キャパ500席)

プログラム内容
〈1〉開口一番:入船亭扇ぢろ『手紙無筆』
〈2〉柳家喬太郎『鰍沢 零』
〈3〉入船亭扇辰鰍沢

〈4〉三遊亭白鳥『鬼コロ沢』

柳家喬太郎『鰍沢 零』

三遊亭圓朝作『鰍沢』が三題噺の会で生まれたことにちなんで、あらかじめ募った「祭り囃子、猫、吾妻橋」という三題から喬太郎さんがつくり、2015年に披露した新作で、『鰍沢』の前段。

つまり花魁「月の兎=お熊」と薬屋の奉公人「伝三郎」のなれそめと、鰍沢に至る経緯が描かれる。

鰍沢 零」のあらすじ

吉原の妓楼ぎろう(遊女と客を遊ばせる場所)熊造丸屋くまぞうまるやで、薬屋「高麗屋」の若旦那が、日頃から目にかけている店の奉公人、伝三郎と飲んでいる。

花魁、月の兎つきのとがそこにやってきた。美しい月の兎は若旦那のかねてよりの相方(相手をする遊女)だが、伝三郎と初めて顔をあわせたその時から、二人は恋に落ちてしまう。

高麗屋は裕福な店で、ときどき奉公人に自由に出かけることを許している。月の兎と顔をあわせて以来、時間が自由になるとき、伝三郎は熊造丸屋にやってくる。月の兎は花魁なので、金のない伝三郎は呼ぶことなどできない。

だが月の兎は伝三郎の待つ部屋にやってきて、二人はしばしの逢瀬おうせを楽しむ。思いをつのらした月の兎はついに足抜け(遊郭のおきてからは許されない脱走)を決意し、いっしょに逃げてくれと伝三郎に打ち明ける。

月の兎には身請け話(金を払って女を遊郭から開放すること)が持ち上がっている。大金を出して身請けするのは高麗屋の若旦那であり、そうなると月の兎と若旦那は夫婦になる。恋い焦がれる伝三郎も暮らすその家でほかの男の妻でいることに、月の兎はとても耐えられない。伝三郎も思いは同じ。

伝三郎は月の兎に応じ、自らの故郷である甲州身延みのぶへ二人で行って身を隠そうと決めた。もし捕まったら、その時は「いっしょに死にましょう。身延に行けないのなら、蓮の葉の上で死にましょう」と月の兎。

吉原が客でにぎわう祭りの日が決行の日。月の兎は伝三郎に、必ず行くという証拠に、たまを渡す。たまは、月の兎がずっと大事に育てている小さな猫。それをふところに収め、伝三郎は待ち合わせの吾妻橋で待つ。

祭り囃子が聞こえるそこへ、思いもよらなかった人物が現れた。高麗屋の若旦那だ。二人の仲に気づいていたのだ。若旦那は「身のほどをわきまえろ」と伝三郎を責める。伝三郎の言い訳は通用しない。

若い衆が、男装した月の兎を引っ張ってきた。月の兎は両手を後ろで縛られている。伝三郎は、懐のたまが飛び出したその後を追い、吾妻橋から川に身を投げた。

月の兎は観念した様子で、これからは若旦那に従うと言う。若旦那は、月の兎の後ろ手の縄をほどくように若い衆に命じる。手が自由になったその瞬間、月の兎はふところから短刀を取り出し、自分の首を引き裂くと、そのまま伝三郎を追って川に身を投げた。

若旦那が言う。「こんなことなら端から言ってくれればいいのに。なんだい、あの二人も、川になんぞ飛び込んで、水臭いねえ」

「鰍沢 零」の感想

月の兎と伝三郎、初めての出会いの際の、二人の間だけには電気が走ったとおぼしきなんとも言えない間、吾妻橋で若旦那に会ってしまった伝三郎の驚き、その若旦那の粘着質いっぱいのいやらしさ、と喬太郎さんの卓越した表現力をまざまざと見せつけられ、まさに圧倒された。

足抜け当日、祭りの日の熊造丸屋で、鳴り物入りの宴会シーンで喬太郎さんが陽気に踊るところなどは、裏で見えない足抜けが進行していることを暗示しているようで、なんとも印象的。

「水臭いねえ」という若旦那のサゲはなんとも酷薄。格差社会の現実も象徴しているようで、江戸時代を舞台にした、まさに現代の落語だと思います。

なにより、噺自体がとても良くできている。滅多に聴けない、古典の風格を備えた喬太郎さんの素晴らしい新作。

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柳家喬太郎のProfile

●Profile
芸名/柳家喬太郎(やなぎや きょうたろう)
生年月日/1963年11月30日
出身地/東京都
●芸歴・受賞歴
1989年10月/柳家さん喬に入門。前座名「さん坊」
1993年5月/二ツ目昇進「喬太郎」と改名
1998年/NHK新人演芸大賞落語部門大賞
2000年3月/真打昇進
2005年/国立演芸場花形演芸会大賞
2006年/芸術選奨文部科学大臣新人賞【大衆芸能部門】
2014年/落語協会理事に就任
2020年/落語協会常任理事に就任

入船亭扇辰『鰍沢』

吹雪の山中、道に迷った男が、山の猟師小屋に住む「月の兎=お熊」に金目当てに殺されそうになる、三遊亭圓朝作のミステリー名作『鰍沢』。極寒の山中でのスリルに満ちた展開に、手に汗握り、背筋は凍ります。

あらすじは、こちらでご紹介しています。

吹雪を逃れて小屋にやってきた男や、その後、帰ってきた伝三郎は、あまりの寒さに小屋に入っても震えが止まらない。伝三郎は指を口のなかに入れて温め、なんでもいいから腹のなかに収めたいと冷たい玉子酒をあわてて口に流し込む。

リアルな描写の連続。声のメリハリ、細かい動作と表情の移り変わりで描写する、その表現の豊かさは扇辰さんならでは。

男が雪の山中に逃げ出すと、やがて吹雪は止み、研ぎ澄ました鎌のような月が青白く雪を照らしている。。。怖っ!

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入船亭扇辰のProfile

●Profile
芸名入船亭扇辰(いりふねてい せんたつ)
本名川越辰朗
生年月日1964年2月13日
出身地新潟県長岡市
HPTwitter

●芸歴・受賞歴
1989年入船亭扇橋に入門。前座名「扇たつ」
1993年二つ目に昇進。「扇辰」に改める
2002年真打ちに昇進

2006年国立演芸場花形落語会銀賞
2008年国立演芸場花形落語会金賞

三遊亭白鳥『鬼コロ沢』

中入り後は『鰍沢』をベースになんと落語界の人間模様を描く、新作の鬼、白鳥さんの『鬼コロ沢』。落語好きが集まったこの会に、まさにピッタリ!

鬼コロ沢」のあらすじ

時は近未来。新潟・三国峠、三遊亭久蔵、久太郎の師弟が雪の山道を歩いている。山向の寺で行われる落語会に呼ばれているのだ。本来ならタクシーで向かえばいいようなものだが、久蔵は金がない。

コロナ禍による不況は落語界にも及び、落語家の多くはもう辞めてしまっていた。落語を演る機会も少ない。金がないので、久蔵は野草を食べることを覚え、その効能にも強くなった。懐にはいつも野草を薬草として入れている。

道すがら、久蔵が久太郎に語る。

自分は七代目として三遊亭圓生の名を継ぐ。久蔵は新作しかできないので、久太郎は驚く。久蔵いわく、圓生→圓丈→白鳥→鳥蔵→久蔵という師弟は、古典→新作→古典→新作という三遊亭魔の法則。村での落語会は圓生襲名のお祝いとしての会なのだ。

もうひとつ、久蔵の兄弟子、古典落語一途で圓生の名を継ぎたかった小鳥姉さんが、どうしても襲名を許さない師匠の鳥蔵を見限って、それ以来ゆくえが知れない、ということ。久蔵は、世話になったからと小鳥姉さんにだけは頭が上がらない。

険しい雪道に、久太郎はもう体が保たない。一軒の山小屋が見つかり、なかで休ませてくれと入れてもらう。女が一人いた。白いシャツに豊満な肉体を包み、下は黒のタイトスカート、網タイツに、家のなかなのにピンヒールというエロエロ女教師のようなその女。

「久しぶりだねえ、久」と、なんと小鳥姉さんだった。落語家時代はデブだったのに、すっかりいい女になっていた。話をしているうちに、久太郎が、久蔵が圓生の名を継ぐということを明かしてしまった。小鳥は、怒る。久蔵は、いなくなったのは小鳥なのだから、自分に非はないと言う。

祝い酒といこう、と小鳥は久蔵たちに玉子酒を飲ませる。久太郎は古典落語『鰍沢』では毒を飲まされるのだからと不安。山小屋を改めて見回すと、のこぎり、斧、猟銃などの山の道具があり、小鳥は免許も持っているという。

だたし弓矢は『源平盛衰記』の稽古のため。川には『船徳』の稽古のために座布団を置いた船も用意していると言う。

玉子酒を何杯も飲み、疲れていた二人は布団で眠り込む。ふと目が覚めると、小鳥が亭主と電話で話している。玉子酒には痺れ薬を入れておいた、と話すのが聞こえた。逃げなくてはと、久蔵は懐からどくだみを出して解毒薬として久太郎にも飲ませた。

月が照らす雪のなか、逃げる久蔵と久太郎。ピンヒールをブーツに履き替え、ミンクのコートをまとって追う小鳥。そのシャツを引き裂くと、小鳥が師匠を殺そうとして返り討ちにあった跡があった。小鳥は圓生襲名への執念を改めてあらわにする。

やがて、久蔵と久太郎は崖の雪とともに船のなかに落ち、その船は鬼コロ沢の急流に落ちた。船は小鳥が『船徳』を稽古するための船だった。船底には座布団もあった。小鳥が放つ矢を、久蔵は白鳥の芸を継承し、座布団で払う。次いで猟銃の引き金に小鳥の指がかかった。

突然そこに空から出囃子。満月が光り「てへ、てへへへへ」「六代目、三遊亭圓生でげす」と圓生が現れた。圓生は小鳥を諭す。「落語に王道も邪道もない。お客さんに喜んでいただくのが本道でげすよ」「男も女もない。襲名などは、もう時代が違う」

小鳥はついに自分の間違いを認めた。圓生の姿がやがて消えた。小鳥は、久蔵を殺そうとしたのはもう高座に上がれないという妬みだったと懺悔する。二人を乗せた船が流れに滑り出し、街に入った。小鳥姉さんを警察に訴えよう、と言う久太郎対し、久蔵は言う。

「座布団もおれも、姉さんの尻にひかれているんだ」

「鬼コロ沢」の感想

圓生襲名をめぐる実際にあった騒動、古典落語のパロディに、女流落語家たちの苦労と興隆〜落語界の人間模様がこれでもかと盛り込まれ、爆笑の連続。扇辰さんの『鰍沢』を受けてのくすぐりも随所にはさまれていた。

落語の蕎麦をすする音が、マイク近くで演ると激流の音に聴こえるとは!

野草・薬草の伏線が最後に回収されるのと、ラスト六代目圓生のまさかの降臨はいかにも白鳥さんらしい荒唐無稽な展開。

圓生の「来たお客さんに喜んでいただいてこそ落語」という言葉には、白鳥さんの本音も垣間見えた(ような)。

1時間を超える長講。まったく飽きさせないっていうのは、すごい。

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▼『鬼ころ沢』収録ですが初期のもので内容は違うと思われます。

三遊亭白鳥のProfile

●Profile
芸名三遊亭白鳥(さんゆうてい はくちょう)
本名藤田英明
生年月日1963年
出身地新潟県上越市
HPTwitter

●芸歴・受賞歴
1987年7月/三遊亭円丈に入門。前座名「三遊亭にいがた」
1990年3月/二つ目に昇進。「三遊亭新潟」に改める
2001年9月/真打に昇進。三遊亭白鳥
に改める
2005年/彩の国落語大賞受賞

まとめ

俺のカジカザワ_ピンバッジ

喬太郎さんと扇辰さんの二席は息を詰めて聴き、三席目は白鳥さんで1時間以上笑いっぱなし。

期待してましたが、期待以上でした。素晴らしいキャスティングと落語の3連発。古典あり、新作ありだし、もう言うことないですよ。こういうマニアックなテーマに基づいた落語会は、楽しい〜です!

帰りは「俺のカジカザワ」記念のタイムリーなピンバッジのお土産付き!

イイノホールの詳細

●イイノホール:URL
住所:東京都千代田区内幸町2-1-1飯野ビルディング4階~6階

最寄り駅:東京メトロ日比谷線・千代田線霞ケ関駅C4出口直結東京メトロ銀座線虎ノ門駅9番出口徒歩3分

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落語会感想

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