初心者のために落語のあらすじをご紹介!
今回ご紹介する演目『子別れ』。落語には笑える「滑稽噺」と人間の情愛を描いた「人情噺」があります。子別れは人情噺。
酒飲みのダメな亭主に愛想を尽かし、女房は息子を連れて家を出ていった。男は吉原の遊女といっしょになるが、その生活は長く続かなかった。やがて男は、息子、さらに元の女房と再会する。。。
『子別れ』のあらすじと感想
“子はかすがいは、この落語から”
.人情噺. .家族.
簡単なあらすじ
熊五郎は腕のいい大工だが酒飲みのダメな男だった。久しぶりに家に帰ってきたと思えばなんと女房に吉原(女郎買い)に行った話を意気揚々としゃべる。
長年の我慢が積もり積もった女房は、息子の亀吉を連れて家を出てしまう。
しかし熊五郎はそんなことも気にせず吉原の女と再婚。しかし女は家事など一切しない自堕落な女だった。女と別れ、熊五郎は心を入れ替えて懸命になって働いた。
一方、女房は、女手ひとつで亀吉を育てるために裁縫の仕事をしてなんとか生活を維持していた。
そんなある時、熊五郎は息子の亀吉に偶然出会った。自分の行いを悔いていた熊五郎は亀吉に母親のこと聞く。再婚もせずに必死で一人でがんばっているという話を聞き、さらに後悔の気持ちが大きくなる。
熊五郎は亀吉に小遣いを渡し「明日二人で鰻を食べに行こう。鰻なんて食べるの久しぶりだろ」と亀吉を誘う。亀吉は飛び跳ねて喜ぶ。
「いいか、明日この時間にここで待ち合わせしよう。ただお小遣いのことも鰻の話も俺に会ったこともおっかあに言っちゃ駄目だぞ」と言って約束した。
家に帰った亀吉は、もらったお金を母親に見つけられてしまい、その出どころを問い詰められる。盗んだのだろうと思い込んだ母親は、正直に言わないとかなづちで殴ると言う。
亀吉は熊五郎から口止めされていたのだが、ついに本当のことを白状する。心を入れ替えた元亭主の話を聞いた母親はなぜか嬉しそうだった。
翌日、父と子で鰻屋で食べていると、母親が訪ねてきた。しかしなんだか会話がぎこちない。そこで亀吉が間に入る。それをきっかけに二人はよりを戻そうと話す。
「子供はかすがい(木と木をつなぎ合わせる金属製のくぎ)だな」と二人が言うと、亀吉が「えっ、おいらがかすがいかい? だから昨日おっかさんがおいらの頭をかなづちで殴ろうとしたんだ」
時間がない方へ超要約こんな話
女房はダメ亭主に愛想をつかし、息子の亀吉を連れて家を出てしまう。ダメ亭主熊五郎は後悔し、心を入れ替えて働くようになった。
ある日、亀吉に偶然出会う。元の女房は再婚もせず女手一つで頑張っているらしい。熊五郎は亀吉に小遣いを渡し、食事の約束をする。
自分に会ったことは内緒だぞと約束したが、亀吉は母親に問い詰められ、話してしまう。女房と子は元の亭主に会いに行く。そして家族三人またいっしょに暮らすことを決意する。
落語好きの視点
人情噺の代表作のひとつ『子別れ』。元は上・中・下に分かれた長い噺なのですが、現在は中の後半部分(女房が子供を連れて出ていき、熊は吉原の女を引き入れるが、この生活も破綻する)とそれ以降の下『子はかすがい』が通しで、あるいは下のみが演じられています。
母親は亀吉を、出どころのわからないお金について「正直に言わないとかなづちで殴る」と問い詰めるのですが、なぜかなづちなのか、それはかなづちが元の亭主の仕事道具だから、なのです。
母親は女手ひとつで息子を育ててはいるものの、両親を持つ子供に負けないだけのプライドを持って息子を育てている。かなづちは父親の存在を象徴するものであり、このシーンで母親は、父親としても息子を叱りつけているのです。
そして同時に、女房として亭主への思いを捨てきれないでいるということも描かれてもいる。
この女房の真意があらわになるシーン、まさに古典落語きっての名シーンです。
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