顔は一見怖い。しかし声を聴くとその印象は全く違う印象へとかわる。
ひょうひょうとした佇まい、舞台映えする特徴的な顔と、ニカっと笑うと飛び出す歯、飛び出すギャグ、自虐も混じったマクラ。その飄々としたすっとぼけ具合は他の追従を許さない。
鯉昇の落語を聴けばきっとだれもが鯉におちる。
古典落語からそれを改変したものまで自由自在に演じきる。奇想天外、抱腹絶倒、そんな「瀧川鯉昇」の魅力について!
ちなみに鯉昇は「りしょう」と呼びます。「こいのぼり」ではないですw
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プロフィールと経歴
瀧川鯉昇1
▼落語家になるまで
- 落語を好きになったきっかけは、小学生の頃におじいちゃんが聴いていたラジオを聴いて。
- 高校時代は演劇部や劇団で活動していたほど演劇好き。
- 東京に出たい一心で明治大学農学部に入学・大学の落語研究会に所属。1年先輩に三宅裕司がいた。上下関係になじめずすぐやめる。
- 大学卒業後、役者になるか落語家になるか迷っていた。
- 弟子入り志願のため春風亭小柳枝の所へ。その時、飲み屋にいる小柳枝は客と喧嘩中。仲裁に入って気に入られ家へ。翌朝、昨日のことを忘れた小柳枝に「誰だお前は」と怒られた時に「弟子にしてください」と志願した。
- 1975年4月に明治大学農学部卒業後、八代目春風亭小柳枝に入門。
▼落語家になった後
- 師匠の春風亭柳橋はいい師匠だったが、酒での問題行動で廃業。
- 爆笑王といわれ、数々の新作落語を生み出してきた落語家「春風亭柳昇」の弟子になる。
- 性格は柳橋はぶっきら棒。柳昇は几帳面で一緒に歩くときはネクタイを着用するように求めるような人。
- 1985年に国立演芸場花形若手落語会金賞、1996年に51回文化庁芸術祭優秀賞を受賞して評価を得る。
- 1990年5月、真打昇進。春風亭愛橋から春風亭鯉昇に改名。
- 2005年1月、今度は亭号を変えて。瀧川鯉昇に改名。
- 高座に上がって数秒間じっと沈黙するのが恒例。じつは高座でどこまで黙っていられるか試している。
- 弟子の数は10人以上。著名な弟子は瀧川鯉八、瀧川鯉斗など。
瀧川鯉昇の魅力
瀧川鯉昇師匠の魅力をご紹介します。
❶鯉昇師匠の落語は単純に面白い
「はずれのない面白い落語」
瀧川鯉昇は芸歴40年。68歳現役にして確実に面白い落語を聴かせてくれる。
高座に上がるとお辞儀をして、あえて口を開かず数秒間あたりを見回す。みんながその沈黙に耐えられずクスクス笑いがくれば、さあマクラの開始。
マクラは世間話からたいてい少し自虐がまじった話。妻が、弟子がなどのエピソードトーク。流れるようなそのマクラはその都度思いついた内容を話しているように聴こえるが、鯉昇師匠の高座に何度も通っている人ならば知っているとおり、実は予め決めてあって、たぶん稽古も重ねた結果のマクラであり、鯉昇師匠のテンポの良いお喋りはもう始まっているのだ。
やがてネタに入る。その語りの心地よさが、鯉昇師匠の最大の魅力。脱力系というのとは違う、力の抜けた軽い感じの落語。飄々としているが、それでいて語りの抑揚は完璧であり、古典落語の長台詞を聴く快感を満喫できる。そして、決して大げさなヒートアップはしない。だから押し付けがましくなく、上品だ。
オリジナルのくすぐりや大胆な改変もあるが、その根っこは「最高のストーリーテラー」。
淀みなく語るその口跡の良さこそが無類に楽しい。それがもっとも効果を発揮し、最高の一席になっているのは『御神酒徳利』だろう。結局のところ、滑稽噺は必ずより滑稽になる。だから鯉昇落語は面白い。
❷古典落語の改作落語が面白い
「改作はまさに快作」
改作落語とは古典落語を現代にあわせて改変した落語の総称。新作落語と古典落語の中間。鯉昇さんは改作落語の名手。ということで面白い改作落語を紹介。
『粗忽の釘』の改作『粗忽の釘 ロザリオバージョン』
▼本来のあらすじ
おなじみ『粗忽の釘』。粗忽の釘はおっちょこちょいの大工の旦那の噺。壁にほうきをかけるための釘をうってと女房に頼まれた亭主。
しかし長すぎるその釘を打ったために、隣の家の壁まで突き抜けてしまう。謝ってきてと女房にいわれ急いで行くのだが、天然の亭主は隣の家ではなく、向かいの家にいってしまう…。
なんとか目的の家にたどり着く。壁から突き抜けた釘は、仏壇のなかの阿弥陀様の上に突き抜けていた。
それを見て亭主は一言。「明日からここにほうきをかけに来なくちゃならない」。
▶さらに詳しい『粗忽の釘』のあらすじはコチラ
▼改作バージョン
改作では壁にうった釘は「ほうき」をかけるためではなく「巨大なロザリオ」をかけるため。
ロザリオとはカトリック教徒が祈りに使う一種の数珠ですが、この落語の場合はおそらく十字架。粗忽者の大工の打った八寸釘は壁を付き抜け、隣の家の仏壇にある阿弥陀様の股の間から飛び出す。隣の家に入っていう。「おたくの阿弥陀様はクリスチャンですか」でサゲ。
ちなみにこんな一幕も「(釘の)アタマを叩いてみて」といわれ、粗忽者の大工、自分のアタマを金槌でゴン。この演出には大笑い。さすが、名人!
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▼他の代表的な改作
- そば処ベートーヴェン(時そば改作)
そば処ベートーヴェンのあらすじと感想はこちら - ちはやふる〜モンゴル編〜(ちはやふる改作)
❸後進を育てる
面白くて優しそうな人柄ゆえか、落語家「瀧川鯉昇」に憧れてか、弟子入門は後を絶たない。
有名な弟子としては、いま瀧川鯉八の人気が急上昇中。さらにメディア等で話題の暴走族あがりのイケメン落語家「瀧川鯉斗」もその一人。
鯉斗いわく、師匠は弟子に丁寧に教えてくれるタイプ。本当に面倒見がよくて、前座時代に行う寄席での太鼓も新聞紙を丸めてバチに見立てて叩き方を教えてくれたり、着物のたたみ方も直接教えてくれるほど。
ある日『新聞記事』という噺を稽古してあげるから覚えてこいといわれて、必死で覚えた鯉斗さん。師匠の前で披露するのに緊張して、冒頭の『付け焼き刃は剥げやすい』というのを間違って『つけまつげは剥げやすい』と言ってしまった。すると師匠。『それ教えてない、だけど合ってる』ww
こういう粋で砕けた人柄からも「瀧川鯉昇」への弟子志願が絶えない理由かもしれません。
《注目》話題のイケメン落語家3人ご紹介!瀧川鯉斗&春風亭昇々&柳亭市弥
瀧川鯉昇のオススメ演目!
瀧川鯉昇師匠のオススメ演目をピックアップ!
❶『うなぎ屋』
男が鰻屋へ。鰻を待ちながら酒を飲む。ところがいくら待っても鰻が出てこない。鰻屋の主人は、鰻を割く職人が出かけたまま帰ってこないと言う。鰻は諦めるしかない。申し訳ないことで、と謝る鰻屋の主人。酒代は頂戴いたしませんので、と男はタダ酒にありついたカタチとなった。
その男が友達と酒を飲もうということになって、またタダ酒を飲めるだろうと、鰻屋へ。今日も鰻を割く職人が出かけていた。男は自分で鰻を選び、主人に焼いてくれと頼む。主人は生きている鰻をつかもうとするが、ヌルヌルとすべって指の間から鰻が出てくる。鰻の赴くままに店の外に出る主人。
「どこへ行くんだ」
「前にまわって、鰻に聞いてください」
鯉昇師匠の飄々としたキャラクターそのままの『鰻屋』。実に軽やか、そして楽しい。
鰻屋の主人のトボケ具合が楽しい。
「うちの鰻割きは、お客が途絶えるとどこかへいなくなるんですよ。そういう間が悪い人なんです」
客が自分で選んだ鰻にビリビリきた。
鰻屋の主人いわく「電気鰻です。秋葉原産」。
こういうギャグを、鯉昇師匠はあっさりポンと言い放つ。それがかえってジワッと面白い。粋です。
ラスト、両手の親指を交互に動かしてニョロニョロ動く鰻に見立てるおなじみのシーン。目を凝らして観ましたが、ホントに鰻でした。
❷『二番煎じ』
冬の寒い夜、火の用心を呼びかけて町内をまわる旦那衆。番小屋に戻って、みんなで冷えた身体を温めようと、鉄瓶で沸かした酒を、風邪の煎じ薬に見立てて飲む。さらに猪鍋も用意し、みんなで食べる。
そこへ見廻りの役人がやってきた。番小屋で酒を飲むのはご法度。見つかったらマズいとあわててごまかすものの、役人にはもうバレていた。役人は自分も風邪気味だからと煎じ薬を知らないふりをして飲み、猪鍋も平らげる。
▶『二番煎じ』のあらすじ、詳しくはこちらをご覧ください。
鯉昇師匠がいかにも町内の旦那衆然とした見た目なのは、落語ファンならばご存じのとおり。江戸の町内の旦那衆であれば、気の利いた会話はお手のもののはず。鯉昇師匠はまさにそんな旦那衆を見事に演じる。
●番小屋での会話
「おとっつぁん、体のなかから暖まるようにって、娘が(酒を)持たせてくれて」
「娘って先月生まれたお嬢ちゃん?」
「そう。口には出さないんだけど目でそういうんだよ」
「そりゃあ、いいお嬢ちゃんができましたねえ」
酸いも甘いも噛み分けた良い旦那衆だなあ。
❸『ねずみ』
仙台にやってきた旅の男が、客引きの利口な男の子に応じ、小さな宿に泊まる。布団は貸布団屋から、食事もなかでは用意できない「ねずみ屋」という貧しい宿たった。
男の子が、夕飯の寿司と酒を用意するために出かけている間、その子の親である宿の主人は、客に身の上話をする。
主人は元はこの「ねずみ屋」の向かいにある大きな宿「虎屋」の主人であったのだが、騙されて乗っ取られ、いまはこの境遇にあるのだという。
話を聞いた客は、一晩かけて木片をから小さなねずみを掘り上げた。やがてそのねずみが評判を呼んで宿泊客が殺到し「ねずみ屋」は大繁盛する。客は稀代の彫師、左甚五郎だった。。
甚五郎の演じ方は落語家によってさまざまだけど、鯉昇師匠の甚五郎は飄々としていながらユーモラスで、とても魅力的。
男の子に部屋が狭いといわれ、甚五郎は「構わない。夜中になると体が五倍になるというような体質じゃないからね」と返す。
どうですか、この飄々としたトボケ具合。
この、突然出てくるシュールな表現も鯉昇師匠ならではの持ち味だ。
この噺の聴かせどころであり難しいところは、宿の主人の身の上話の部分。六〜七分ある長い独白です。
鯉昇師匠の身の上話は、リズム感がありながらも川の流れのようによどみなくスムーズ。
聴いていてなんとも心地よいのです。これぞ、古典落語ならではのリズム&メロディ!
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〈CD〉瀧川鯉昇 シリーズ1〜4
2005年以降の独演会や落語会での高座を収録シリーズ。1〜4まで発売。演目2席づつ収められた1時間の内容。注目はCDジャケット⁉鯉昇師匠のひょうきんさドアップの迫力。落語CDで初めてジャケ買いしてしまいそう。で、落語は面白いかって?愚問です。
◆「瀧川鯉昇」内容 |
〈DVD〉瀧川鯉昇 落語集
瀧川鯉昇の落語集として2013年に発売されたDVDでどちらも90分ほどの内容量。〈1〉落語集 「千早ふる」「質屋庫」、〈2〉落語集「蕎麦処ベートーベン」「芝浜」。注目は改作落語の「蕎麦処ベートーベン」。他の演目は違う落語家でも観ることはできますが、鯉昇師匠の改作はなかなか観ることのできるタイミングがないですからね。
瀧川鯉昇のチケット&スケジュール
瀧川鯉昇さんのスケジュールを簡単に確認できるのがチケットぴあ。もちろん寄席とか、ぴあで販売してないものは載ってません。
ま、確実にチケットがあるなということはわかります。全部のスケジュールを知りたい方は瀧川鯉昇さんは充実したHPをもっているのでそこをみれば基本的にはわかります。
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