新作落語の革命児「三遊亭円丈」さん
惜しくも2021年11月30日に享年76歳で死去。死因は心不全。その年の5月には急性硬膜下血腫で入院していました。
多くの新作落語を残し、そしてその新作落語は全てにおいてオリジナリティに溢れていた。
その衝撃はフォロワーやチルドレンを産み、今や新作落語は古典のおまけでも亜流でなく、メインストリームまで引き上げるきっかけをつくりました。
まさに「新作落語のカリスマ」です。
円丈さんは言います。
「古典落語のみならず、柳家金語楼さん達の作った古典を踏襲した新作落語自体を否定して作ったのが自分の新作落語」
今な現代新作落語の生みの親として人気を誇る、三遊亭円丈さんの評価・経歴・お薦めの新作落語をご紹介します。
プロフィールと経歴
▼落語家になるまで
- 1944年12月10日に愛知県名古屋市瑞穂区雁道町に生まれる。家業は写真館。
- 1948年にジフテリアにかかり死の瀬戸際を歩く。その後も数々病気を。
- 小学5年生ぐらいから落語の面白さに気づき、ラジオで落語を聴き入る。
- 1960年に高校入学し演劇部に入部。さらに落語を十数本覚える。この頃から落語家になりたいと思うようになる。
- 1963年に父親は兄より出来の悪かった、弟の円丈さんに写真館の跡継ぎにさせようとしていたが、円丈さんは東京言って落語家になると宣言し、揉めた末に明治大学、日大、中央大学、東洋大学、法政大学を受け全部受かる。そして明治大学文学部演劇科に入学するも中退。
- 六代目三遊亭圓生に弟子入り志願するが門前払い。
- 1964年にお土産をもって行ったら家にあげてくれ、他の志願者と一緒に落語のテスト。12月に認められ七番弟子となる。顔の印象から前座名「三遊亭ぬう生」と名付けられる。
▼落語家になった後
- 1969年4月に二ツ目に昇進。二ツ目時代までで130本の古典落語を習得。
- 1973年に文通をきっかけに奥さんと出会って結婚。
- 1977年第一回「実験落語」を開催。
- 1978年3月に6人抜きの抜擢で真打に昇進。「三遊亭圓丈」を襲名。
- 1979年6月に師匠の圓生発端の落語協会分裂騒動が勃発。師匠についていき、落語協会を脱会・落語三遊協会に参加。
- 1979年の圓生急逝後、1980年に落語協会に復帰。
- 1981年にフジTV放送演芸大賞最優秀ホープ賞受賞。
- 1981年に掛布雅之さんと共演した金鳥のCMでブレイク
- 1986年に『御乱心 落語協会分裂と、円生とその弟子たち』を発売
- 1991年に落語会「応用落語」を開催し、弟子の三遊亭白鳥と春風亭昇太、柳家喬太郎、林家彦いちの当時の若手落語家が出演。
- 2016年6月昔に渋谷ジァン・ジァンで毎月開催されていた新作落語の会『実験落語』をCBGKシブゲキ!!にて実験落語neoとして復活。
- 2021年5月に急性硬膜下血腫が判明して入院する。
- 2021年11月30日。享年76歳で死去。
▶円丈のマッターホルン山頂にうどんを出前「遥かなるたぬきうどん」動画視聴
▼エピソード
- 名前の三遊亭円丈の“円丈”は“圓状”と表記されることもあるが、本人曰くどっちでもいいそう。ちなみに本人は円丈を基本使ってる。
- 実は三遊亭円丈は三代目だが、師匠の圓生が「うれなかった落語家が使ってた名前だから、その落語家はカウントしない」と理由で初代となっている。
- それまでの人情噺風の新作落語から、独自のオリジナリティを発揮した「実験落語」を創作。
- 三遊亭白鳥、柳家喬太郎、春風亭昇太、六代目桂文枝などは円丈の新作落語に影響されたチルドレン。
- 圓生から前座時代から期待の弟子として認められていた。
- 古くからパソコンやゲームに精通しており、パソコンやゲーム関連雑誌に連載を数多くもっていた。
- 奥さんは円丈さんがCMでブレイクした時、自分と離れた世界に行ってしまうと思い、あまり売れないでと思ったそう。ただ考えを変えて逆にマネージャーの仕事をかってでた。
- 新作落語のネタ数は九十本以上。
- 師匠が新作落語を嫌ってたので、古典落語を演じていたが、1980年代以降はは新作派になる。
円丈さんの熱い魂の叫び集
円丈さんはとにかく熱い!
若手にもライバル心を燃やし、今の落語界・落語家・落語団体に喧嘩売ってくスタイル。
でもそれは、ほんとに落語を愛しているから。だから古い体質で守りにはいって、社会や世間の方から落語が忘れされて、伝統芸能のとして一部の人だけが楽しむようなものになってしまうのが許せないんだと思います。
ということで、円丈の熱き思いをまとめてみました。
落語や新作落語に対する熱き思い
落語は大衆芸能なんだということなんです。この視点が欠落してるんですよ。
大衆芸能は、現代から離れては成立し得ない。今の世界と古典落語の世界では、あまりに乖離してる。
「昭和30年代に古典落語の世界は終わったんです。番頭や花魁や奉公や長屋。これが通じたのはかろうじで昭和30年代まで。そっからは世界が様変わりして「現代」が始まった。
生活様式が全く変わってしまったわけですよ。自分もなんとか時代に合わせながら、古典落語の世界を現代に寄せてきた。でももう無理でしょ。
一部の人だけがわかればいいとなれば、大衆との亀裂がどんどんどんどん広がっていく。。
だから落語は大衆芸能なんだと、大衆を振り向かせるために新作落語を作り続けます。
お客さんの期待と世間を騒がせた圓生の跡目争い!
高座でパソコンを使ったり、扇子で表現するのではなく実際タバコをすって見たり。みんな笑って喜でくれるそう。
円丈さん自身はそこまで面白いと思わないが、きっとお客さんはそういう僕を見に来てる。
だから期待に答えて既成概念を取っ払いたい。
まさにそんな気持ちがある一大事件を巻き起こした。
それは三遊亭の大名跡「圓生」を誰が継ぐか問題。
圓生の弟子の三遊亭円楽に指名された「三遊亭鳳楽」。そこに割って入る圓生のこれまた弟子「三遊亭円窓」「三遊亭円丈」が三つ巴の争いに発展。
この三つ巴の戦いがマスコミに取り上げられ、最終的に円丈さんはジョーク半分で三遊亭鳳楽さんと「円生争奪杯落語会」を開催!
古典落語の居残り佐平次、強情灸で勝負をかける!
保守的な落語協会について
「落語協会は馴れ合いです」ときっぱり。
・いい方向に改革していこうという気概がない。
・解散して思いが同じものだけが集合して団体を作ればいいと思う。
・年功序列みたいな古い慣習はいらない。
優秀な弟子達を沢山排出!
落語家は客の前に出るだけでなく、後継者を育てるまでが仕事と語る円丈さん。
弟子は三遊亭らん丈、三遊亭白鳥、三遊亭丈二、三遊亭天どん、三遊亭究斗、三遊亭彩大、三遊亭丈助、三遊亭れん生、三遊亭ふう丈、三遊亭わん丈、三遊亭はらしょう。
出世頭筆頭は新作落語で人気の「三遊亭白鳥」と若手注目株の「三遊亭わん丈」さん。
そんな二人の師匠とのエピソードを紹介!
三遊亭円丈のオススメ新作落語
三遊亭円丈さんの魅力と、その魅力が詰まったオススメ演目をピックアップ!
『悲しみは埼玉に向けて』のあらすじ
悲しみは埼玉に向けてはまくらの延長線上のような噺です。
ちなみに昔のお噺。
●演目あらすじ
階段を登って駅の表示をみる。そこに書いてある名前は「きたせんじゅ(北千住)」
なんという悲しみにみちた名前だ。
埼玉の隠し玄関「北千住」、群馬の物置「北千住」。東京の場末の栄場「北千住」。
JRが4本も通ってるのに四階建てのビルがない。遠くにかろうじて見えるイトーヨーカドーの鳩。こんだけ交通の便がいいのに駅前にあるのはパチンコ2軒と消費者金融。
パチンコ店の名前も「パチンコカメ」「パチンコびっくり屋」。意味がわからない。。
実は、北千住には私が好きな家族経営の居酒屋があります。ここは従業員は多いが全部家族なので本当の従業員は一人。
その一人のことをお客さんがこう呼ぶ「専務!!」。そして専務が肉じゃがをもってきて、常務がもつ焼きをやいて、社長が靴を揃える。
でもこれは昔の話。あれから14年たち、北千住は様変わりしました。まず、パチンコカメ潰れました。そしてパチンコびっくり屋は「パチンコびっくり屋パート2」にバージョンアップ。
しかも西口と東口に1軒ずつ。でもなぜか名前は「パチンコびっくり屋パート2」で同じ。パート1はどこいった⁉ ただ、理由を聴いてはいけません。これこそが“北千住”なのです。
一番かわったのは北千住を知らない子供達が増えたこと。
昔は北千住を歩いているところを見られたら、経歴に傷がつくので逃げるように素通りした。履歴書に「賞罰なし。北千住あり」と書かなければいけない。
しかし、今はすごい!どこでも建てる丸井でさえ、ここに立てたら駄目だとためらった北千住に、なんと「ルミネ」ができた。あのルミネです。
そしてためらってた丸井さえデパートを立てた。でもみなさんは思いませんか。いったい、北千住なんかでだれが買い物するんだと。
います。「私の家族」です。
普段は綾瀬ですが、特別な日は北千住にいく。さらに特別な日は上野や銀座へ。その時、北千住の住民はいうのです。「今日は東京に行ってくると」
北千住は東京じゃないかい?そんなツッコミは野暮です。
そして注目は足立区きっての名門の「足立学園」。なんとこの眼の前にそびえ立ってるのが「パチンコびっくり屋パート2」。
話は変わりますが、東武スカイツリー線の駅に「越谷」という駅があります。世にいう「越谷伝説」の舞台です。
越谷伝説はどんな話か。
息子が越谷に家を立てた。それを両親に報告すると父親がどなる。
父親「越谷⁉埼玉かー!なんでお前は人の道に外れたことをする!」
息子「人の道ですか?」
父親「そうだ。東武だろ。あんなのは真っ当な人間が乗ってはいけない。のっていいのは中央線、京王線、小田急線。これが人の道を歩くもの乗る線だ。お前はもう私の息子ではない」
父はそう言い、息子は母に助けを求めると母がいう。
母親「埼玉に住むような子供を生んだつもりはありません!!」
この男は打ちひしがれ、北千住の駅で自殺した。。。悲しい越谷伝説のお噺でした。
『ぺたりこん』のあらすじ
部下の高橋から電話で、書類を取りに行ったら両足をくじいたという。バナナの皮を避けてりんごの皮ですべって転んだという。
とにかく高橋くんは仕事ができない。
なんとか会社にたどり着いた高橋くん。しかも会社にきてなんだか奇声をあげている。
課長〉どうした?高橋くん。
高橋〉はい。なぜか机に手をついたら離れなくなってしまって。
課長〉なんだそれは。まずいじゃないか。
そこに部長がやってくる。課長は高橋のこの状況を相談したら、部長から驚きの回答。
「それはいい。クビにするチャンスじゃないか」。
高橋くんは仕事ができないからクビにできる機会を待っていた。そこで課長は嫌がらせに机の配置換えを提案し、高橋くんを窓際ならぬ壁際に移動させる。
高橋〉救急車呼んでください。課長。
課長〉あのね。会社には救急車を呼ぶ時の規定があるの。一つは目玉が10cm以上飛び出した時、一つは鼻が5cmめり込んだ時。この2つだから。無理。
課長〉ちなみにこんな状況だからね、もう査定も下がるから。君はサラリーマン始まって以来のボーナスマイナス査定。つまりボーナス分を逆に会社に払わなければならない。
高橋〉勘弁してくださいよ。。
高橋〉わかりました。電動ノコで切ってください。
課長〉いいの?腕いって。
高橋〉そうじゃなくて、手の周りの机部分をまわるくです。
課長〉でも会社の備品はきれないなぁ。
そこで総務課と相談する。そして結論がでた。
総務〉高橋くんと机、この2つをどちらが会社にとって有益か考えて、有益な方を選びます。ということで、机はきらない。高橋くんはそのままでいい。
高橋〉よかった。多分そうなるんじゃないかなと、落語を聴いてるお客さんも思ったんじゃないかな。
翌朝、社長室に呼ばれた。
社長〉よくきたね。ということで人事通達。高橋と机、どっちもクビ。
高橋〉え、勘弁してください。40歳で机つきの人間に再就職先はないって言われていますから。
社長〉わかった。よし、こうしよう。んんんん・・・やっぱりクビ。
打ちひしがれて、部屋に戻ってくる。そこに会社の顧問弁護士の先生がやってくる。クビを言い渡すためだ。
先生が就業規則を読み上げる。
「就業規則第五条。社員は机を引きづってはいけない。りんごの皮ですべってはならない」
課長〉ま、高橋くん。就業規則違反ということだからクビだよ。
高橋〉ひどいじゃないですかぁ。
課長〉わかったよ。私も鬼じゃない。じゃあ、いますぐ手が机から取れたら、多目に見てやってもいい。
高橋〉本当ですか。では!
すると、タイミングが良かったのか、なんと机に張り付いた手が何故かとれた。
高橋〉課長やりました。手が取れました。
すると課長はさらに就業規則を読むように顧問弁護士にいった。
課長〉就業規則第6条。一度机に張り付いた手を離してはいけない。
ただ、懲戒免職というのは世間のイメージが悪く流石にさけたい。そこで顧問弁護士の先生に相談。するといいアイデアを出してきた。
それは社員だと懲戒免職にしなければならないが、もし高橋くんを机に備え付けてある物、つまり机の一部になったと考えたとすると、すなわち社員ではなく備品となる。
課長〉それでどうだい?机になる覚悟はある?給料はでないよ。ただリース料として多少振り込まれるから。
高橋〉わかりました。覚悟が決まりました。よろしくおねがいします!
課長〉じゃあ、机として頑張りたまえ。
高橋〉はい、いなばの物置のように100人乗っても大丈夫というような机になります。
課長〉いいじゃないか。その調子だ。机として自覚が出てきたね。
高橋〉よーし頑張るぞ!素晴らしい机になってみせるぜ!!
三遊亭円丈のオススメCD、DVD
三遊亭円丈さんのCD、本をご紹介します。
CD作品「三遊亭円丈の落語コレクション」1〜10
三遊亭円丈のCD作品シリーズ。2001年にシリーズで発売されたCD集。しかもその数10作品。晩年の熟練した円丈の魅力が詰まっている。
◆シリーズ1〜10の内容 【1】悲しみは埼玉へ向けて、10倍レポーター、インタビュー
【2】横松和平、いたちの留吉 【3】一ツ家ラブストーリー、ふりかえれば、人情噺「かこいで、へ~~っ」
【4】新寿限無、わたし犬、名古屋版金明竹
【5】月のじゃがりこ、肥辰一代記 【6】ぺたりこん、悲しみの大須 【7】遥かなるたぬきうどん、新ぐつぐつ 【8】怪談「真景累ヶ淵」より~豊志賀の死~、新・ガマの油 【9】圓生争奪杯の名演!居残り佐平次、強情灸
【10】インドの落日、夢一夜
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エッセイ本「師匠、御乱心!」
三遊亭円丈さんの師匠で落語協会前会長の「三遊亭圓生」が、1978年に会長の柳家小さんの年功序列で真打昇進させる方針に反旗をひるがえし、最終的に落語協会を脱退した事件を弟子の立場から書いた作品。
すべて実名で裏話を書きまくったこの作品は業界内から賛否の嵐を巻きおこした。
三遊亭円丈の充実のHP
三遊亭円丈さんはパソコンに造詣が深く、なんとHPも自分で作ってしまうします。さらにリニューアルまで。
だからとにかくコンテンツが盛りだくさん。
▼円丈のHPのコンテンツ
- 円丈NEWS
- 『落語関係』プロフィール、日記、ファンページ、仕事の依頼
- 『円丈いろいろ』パソコン&ゲーム関連、商店街、円丈の健康問題
- 『ブログ』
- 『サイトマップ』まである!凄い!
特にびっくりしたのはゲーム。XBOXまで話題にしてるし、アクティビジョン・ブリザードから発売された「WarCraft Ⅲ」を40時間もプレイし、あまりの難しさに愚痴をいう。
またPS3などの重厚長大ゲームの将来の行く末まで悲観する批評まで。60歳でこの感覚はすごすぎる。おそらくゲームに詳しくない人は何言ってるか全くわからないと思いますが、とにかくそこらのゲーム好きな若者よりずっーとゲームに精通している。
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