親子噺二席。やり放題の親子から、心が通い合う親子へ。
2021年7月19日(月)、有楽町にあるよみうりホールで開かれた「春風亭一之輔のドッサリまわるぜ2021」へ。
今年は平日でごめーん。ということで、まだチケットあるようです。よろしくどーそ、よみうりホール→ 7月19日(月)東京 @よみうりホール 18:30st|らくごDE全国ツアーvol.9~春風亭一之輔のドッサりまわるぜ2021~ #一之輔ドッサり https://t.co/i8MXzEnW29
— 春風亭 一之輔 (@ichinosuke111) July 8, 2021
11月20日も、ドッサリらしいぜ!
「春風亭一之輔のドッサリまわるぜ」は一之輔さんの全国落語ツアーで、2021年は全国で全29回開催されます。6月の岐阜公演が延期となった結果の全29回なのですが、ここでトピックスをひとつ。
落語に入る前の一之輔さんのオープニングトークで明かされたのですが、プロモーターの夢空間さんから、30回めを東京でやりましょうとオファーされたとのこと。11月20日(土)、よみうりホールです。
8月6日現在、夢空間ホームページにはまだ記載されていないので、公演が本決まりかどうかはわかりませんが、この日の一之輔さんはすっかりその気のようでした。
「小三治をゲストに迎える」と。「柳家とは限らないよ」wwwだそうです。
7月19日(月)は本来は海の日の休日ですが、今年はオリンピックで海の日が移動したため、平日になりました。それでもキャパ1,100人のよみうりホールがほぼ満席。一之輔さんの動員力、やっぱりすごいですねえ。
▼公演情報
◯出演者:春風亭一之輔・春風亭ぴっかり☆
◯開催日:7月19日(月)
◯開演:18:30〜
◯料金:3,700円
◯会場:よみうりホール
▼プログラム内容
〈1〉春風亭ぴっかり☆『任侠流山動物園 流山の決闘 緋牡丹のお政編』
〈2〉春風亭一之輔『団子屋政談』
〈3〉春風亭一之輔『藪入り』
↓オープニングトークの様子
7月19日 よみうりホール「一之輔のドッサリまわるぜ2021」春風亭一之輔師匠 オープニングトーク pic.twitter.com/GLSSPuBAFP
— 橘蓮二 (@renji_koza) July 22, 2021
春風亭ぴっかり☆『任侠流山動物園 流山の決闘 緋牡丹のお政編』
7月19日「一之輔のドッサリまわるぜ2021」春風亭ぴっかり☆さん『任侠流山動物園〜緋牡丹のお政編〜」 pic.twitter.com/Q1NGYQE8Rm
— 橘蓮二 (@renji_koza) July 22, 2021
まずは春風亭ぴっかり☆登場。ぴっかりさん、来年3月に真打昇進が決まったそうですね。おめでとうございます。
「コロナ禍でヒマだけど、東映の任侠映画のDVD観てれば平気」という東映任侠映画LOVEのマクラ。昭和のスター勢揃いの東映任侠映画。確かにみんなカッコいい。「白鳥師匠から教えてもらった」と『任侠流山動物園 流山の決闘』へ。
主役豚次(豚)は宮治さん、敵役パン太郎(パンダ)は馬風師匠のイメージで演っているのだそうですwww
任侠流山動物園 流山の決闘のあらすじと感想
新作の鬼、三遊亭白鳥作の浪曲「清水次郎長伝」をベースにした破天荒な「動物落語」です。人間はちょっとしか出てきません。
千葉の流山動物園が舞台。象のお政が病気で伏せていて、ほかに人気の動物がいない。豚の豚次は園長から、経営難に陥っていると知らされる。牛の牛太郎、ニワトリのチャボ子に相談してもいいアイデアが出ない。
豚次は古巣の上野動物園へ。親分のパンダ、パン太郎に、流山に来てくれと依頼する。その人気で流山動物園を客を呼んでほしい、というわけだ。
豚次はかつての兄貴分、虎の虎男に尻をかじらせて、流山へ出向いてくれるというパン太郎への忠誠を示したが、パン太郎は約束を破り、流山には行かないという。騙された。
ケガを負って流山に帰った豚次。牛太郎、チャボ子も園長から人間の言葉を教わったところ、流山動物園は大盛況となった。逆に上野動物園は閑古鳥。怒ったパン太郎と虎夫が流山に殴り込んできた。ここにお政登場。お政こそは、かつて動物たちを束ねた次郎長の一の子分だった。。。
お政は、白鳥師匠のオリジナルではマサオ(政五郎)。それがぴっかり版では女になって、イメージはもちろん東映任侠映画からのご出演、藤純子。マクラからの流れも見事な『任侠流山動物園 流山の決闘 緋牡丹のお政編』でした。
ぴっかりさんの明るくて元気な語り口は、動物キャラ満載のこの噺と相性がバッチリ!
春風亭一之輔『団子屋政談』
7月19日「一之輔のドッサリまわるぜ2021」春風亭一之輔師匠『団子屋政談』1 pic.twitter.com/FcsR8TIrn8
— 橘蓮二 (@renji_koza) July 22, 2021
一之輔さん、ご自分の長男のことをグチりつつ『初天神』へ。
『初天神』の主役は金坊とその父親。金坊は5~7歳あたりのイメージで、父親にいろいろ買ってくれとおねだりするものの、基本はいい子。父親も金坊を愛してる。
一之輔さんの『初天神』の場合、そうはいかない。金坊は生意気でずる賢く、親を親とも思わず、しかも親より口も立つイヤな子供。そんな金坊を父親はもはや持て余している。といった状態。
現代に演る古典落語として親子関係を思いっきり現代的に屈折させたこの落語は、一之輔さんの代表的な噺のひとつだと思う。
今日も初天神の縁日にやってきた親子は飴屋に迷惑をかけ、団子屋を怒らせた。団子に塗る蜜の壺を荒らされてをダメにされ、ついにキレた団子屋は奉行所へ訴え出る。
おお~、ここからは一之輔さんオリジナル『団子屋政談』パートへ突入。
団子屋政談のあらすじと感想
この親子は毎年初天神の縁日を荒らしまわる親子として知れ渡っていた。ついに奉行所の白州に引き出される。大岡越前守の裁きは「親子二人、これから二度とするな」という当たり前のものだった。
ところがこれに金坊は不満。「裁きで島流しにされる→島に遊びに行ける」と学校でみんなに自慢してしまっていたからだ。むしろ島に行きたいがために、実際の自分の初天神での行動を見てもらってもう一度、島流しの件を考え直してもらいたい。
金坊はいう。「学校の先生には自分の目で見て判断するように言われている。だから明日、お奉行様にも初天神にきてもらいたい」という理屈をつけて、大岡越前守を説得した。
翌日、腹が痛いという父親を置いて、金坊は一人で初天神へ。
暴れて島流しになるぞと意気込む金坊。すると江戸のスター、大岡越前守は白馬に乗って颯爽とやってきた。今日は二人で疑似親子。奉行は金持ちだ。飴屋で三百両、団子屋で千両払って買い占め、金坊に浴びせるかけるように与えた。
始めのうちは嬉しかったもののやっぱり子供。いつもと違う感じ、さらに人が集まってきて父親のいないひとりぼっちの金坊は不安になり怖くなる。しまいには「やっぱりおとっつぁんが良かった」と言って泣き出す始末。
すると「これ、八五郎、出てまいれ」と奉行。馬の首を抜くと、なんと白馬のなかには父親が入っていた。あらかじめ奉行が仕込んでいたのだ。
奉行「金坊は、そうのほう、遠島、島流しじゃ」
金坊「そんな。。心入れ替えて、せっかくおとっつぁんと仲良くしようと思ったのに」と泣きじゃくる。
奉行「天神さまは太宰府に流された。余もこの一件、さっぱりと水に流そうではないか」
※天神さまは太宰府に流された=菅原道真は都から太宰府に左遷された、という故事
親にむりやり飴を買わせる金坊に、飴屋いわく「坊っちゃん、いいウデしてるねえ」。次いで団子も買わせた。団子屋いわく「坊っちゃん、グッ、ジョブ」という、一之輔さん独自のくすぐり。これを初めて聞いた時に、一之輔さんならではの現代古典落語だと思わされた。
高座ではいまだに新たなセリフが飛び出してくることもあって、何度聞いても笑ってしまう耐久性のある『初天神』に『団子屋政談』。
大岡越前守は「チャ~ン、チャ、チャ~ン」と『暴れん坊将軍』のテーマを歌いながら、白馬に乗ってやってくるのですが、まさに松平健の、あの強引な感じがまさにドンピシャ。
春風亭一之輔『藪入り』
7月19日「一之輔のドッサリまわるぜ2021」春風亭一之輔師匠『薮入り』1 pic.twitter.com/Mxe7bltC4A
— 橘蓮二 (@renji_koza) July 22, 2021
仲入り後「明治時代、ペストの原因となるネズミを捕まえて交番に持っていくと、お金がもらえ、さらに当たれば懸賞金ももらえた」というマクラ。
『藪入り』に入る前の予備知識として欠かせないマクラで、ちょっと驚いた。というのは、親子がテーマの噺を二席続けるというのは普通はありえないので。
『団子屋政談』のラスト、金坊は子供らしさを取り戻すものの、ずる賢いイヤな子供であった頃の傍若無人ぶりが印象としては大きい。
なので、『藪入り』で江戸時代らしい素朴な親子の愛情を描いて、満員の客にシンプルに良い気分になってもらって終わりたい、という一之輔さんのバランス感覚なのかなと思ったけど、果たして。。。
「藪入り」のあらすじと感想
明日の朝、奉公に出している一人息子の亀吉が藪入り(正月とお盆の休み)で、何年かぶりで家に帰ってくる。夜中、布団のなかで父親は「どうも今日は時が経つのが遅いような気がする」と言いながら、うれしさのあまり眠れない。
そのうち「帰ってきたら、あったけえおまんま食わしてやろう」と息子に食べさせてやりたいものを次々に言い出した。
「味噌汁、焼海苔、納豆に、刺し身は中トロのいいとこだな。天ぷらは小エビのどっさり入ったやつ。洋食もいいな。あいつ油っこいの好きだからなあ。カツレツ、オムレツ、ビフテキだな。うなぎもいいな。寿司(出前)取るか」とキリがない。
次いで「あいつ連れて、浅草に墓参り行こう」と言いだし、「せっかくだから」と連れていきたい先が江戸を飛び出してはるか遠くまで及んでしまう始末。
二人して一睡もできないまま5時になった。
父親「よし、おっかあ、飯炊け」
母親「いま炊いたら、亀が食べる頃にはお冷ご飯だよ」
父親「お冷ご飯でもいいんだ、あったけえおまんま食わせろ」
亀吉が帰ってきた。父親はうれしさのあまり緊張して息子を見ることもできない。
父親「亀、大きくなったか」
母親「情けないねえ、自分で見なよ」
しばらくして、やっと打ち解けた。父親は「おめえ、朝湯行ってこい。桜湯、きれいになったんだよ」「ゆっくり入ってこい。早くけえってこいよ」と送り出した。
亀吉が出てる間に、亀吉の財布にお小遣いを足してあげようとした母親が、そこに小さく畳まれた5円札が3枚あるのを見つけ、もしかしてどこかから盗んだ金ではないかと言い出した。
15円というのは多すぎる。「野郎、やりやがったな」と父親も同調してしまう。亀吉が朝湯から戻った。父親は亀吉に手を挙げる。
母親「逃げな。おっかさんが悪いの。ちょいと覗いてしまったんだよ」
亀吉は泣き出した。「うえーん、盗ったんじゃない、盗ったんじゃないよう。ねずみの懸賞に当たったんだよう。特等の15円が当たったんだよう」「店の旦那さんに預かってもらっていたのを、うちに持ってってやんなって旦那さんに言われて、今朝渡されたんだよう」「あとで驚かそうと思って、渡そうと思っていたんだよう」
父親「こめんな、亀。そうか、ねずみの懸賞に当たったのか。いいご主人さまだ。大事しろ。これもみんな忠のおかげだ」
江戸時代の庶民の親子、豊かではないし、息子は奉公に出ていて普段は離れてはいても、それでもしっかりと心が通い合っている親子。
なんといっても、父親の息子へのあふれんばかりの愛情がたっぷり迸った一之輔さんの一席。
まとめ
落語のなかで、情に訴える良い噺とされるもののなかには、そこはストーリーが都合良く出来過ぎじゃないかと思われるものがある。親子の情愛を描く『藪入り』はいわゆる良い噺だけど、無理な展開がないので、とても素直に心に響く。
展開が凝りに凝ってる『団子屋政談』の後は、素直な良い噺の江戸落語で楽しんでもらいたいという一之輔さんの意図で『藪入り』になったのだと思います。『藪入り』が季節の噺ということはもちろんありつつ、珍しい親子噺の連続二席でした。
●よみうりホール:URL
住所:東京都千代田区有楽町1-11-1 読売会館7階
最寄り駅:東京メトロ有楽町線有楽町駅よりD4・D6出口
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