奇跡の大傑作!迫真の語り口、展開の妙、見事なサゲが揃った大傑作!
2009年6月、横浜にぎわい座で開催された「横浜開港150周年記念 柳家喬太郎独演会」において披露された、にぎわい座からの依頼による新作。
噺の内容は現代の先輩と後輩があるエピソードを話してる。そしてその話しが再現VTRの用に展開する。そのエピソードは3人のほろ苦い三角関係。
慶応二年一月二十日、遊女400人以上が焼死したとされる港崎遊郭の豚屋火事を端緒につくられた作品。
『純情日記港崎篇』は、喬太郎さんの新作中でも最長の、ほぼ1時間の長講。
『純情日記港崎篇』のあらすじと感想
横浜の中居屋、主人・十兵衛が失踪。桜田門外の変がからんでいると噂され、その奉公人であった卯之吉は職を失った。道でお松と会う。お松の父親も中居屋のあおりを受けて困っていた。
金のためにお松に芸者になると卯之吉は前に耳にしている。「お松ちゃん、おれは先から(以前から)」と言いかけるが、無職の卯兵衛はその先を口にできない。
【現代に場面転換】
後輩32歳から相談があるというメールで呼び出された先輩56歳とその後輩が、横浜・関内駅で待ち合わせ。まだ飲むには早いので、横浜市内を見物。
やがて横浜公園に着いた。「ここには遊郭があった。昔から賑やかだったんだろうなあ」と先輩。
場面戻って遊郭。卯之吉がイギリス商館で通訳をしている中国人のリー(季王竜)さんを、接待で連れてやってきた。そこには芸者になったお松、千代丸がいた。リーさんはとても喜び、卯之吉に礼を言う。
その後、当時では珍しい豚肉を食べさせる店「豚鉄」で一人で飲む卯之吉。リーの前でニコニコする千代丸の様子があたまのなかに残り、おもしろくない。
なじみになったリーが遊郭で千代丸と二人っきり。
リーは「いつかは上海に帰らなくてはならない。いっしょに上海に来てほしい」と告げる。「ラシャメン(異人相手の遊女)かお妾(愛人)じゃないと、異人さんの嫁にはなれない」と千代丸は断る。
【現代に場面転換】
先輩と後輩は港の見える丘公園までやってきた。後輩の相談に「女ははぐらかすんだよ。まあ、店行こう」と先輩。
場面戻って、卯之吉と千代丸が道でばったり会う。
「おれを置いて上海へ行くのかい」という卯之吉に、千代丸は「行きやしないけど、ちょっと待って。あなたの気持ちはわからない、言われたこともない」と返す。
千代丸「リーさんは優しいし、金払いもいい。だから好きよ」
卯之吉「それじゃラシャメンじゃねえか」
千代丸「わたしは芸者。でも仲間。ラシャメンの人たちだって好き好んでなったんじゃない」
再びリーと千代丸が遊郭で二人っきり。リーは上海に帰ることが決まった。リーは話し出す「わたしといっしょに上海に行ってくれなくていいです。わたしにとっての上海は、あなたにとっての横浜。あなたが上海に行っても、あなたの笑顔はない」。
リーは別れの品として千代丸の本名『まつ』と掘った落款、赤メノウでつくった判子を千代丸に渡す。
【現代に場面転換】
やっと中華街までやってきて店で飲む二人。後輩が言う「上海に赴任が決まって、彼女にいっしょに行ってくれと言ったんです。行ってくれなくても待っててくれるでしょうか」。「知らねえよ、バカ」と先輩。
時が経ち、千代丸は父親の具合が悪いのと借金とで、瀧川という名の遊女に落ちていた。そこに会いにきた卯之吉は「おれの気持ちは変わらない」と言う。その夜、二人は初めていっしょになった。
卯之吉がぐっすり眠り込んでいるお松を見ると、お守り袋が目に入った。それを開け、なかに入っている落款を見つけた卯之吉は、お松の自分への気持ちは上辺だけのものと思い込み、お松の首に腰紐をそっと巻きつける。
その時、遊郭で大きな声が上がった。「火事だあ」。慶応二年一月二十日、港崎遊郭の豚屋から火が出て、またたく間に遊郭を焼き尽くす。とっさのことで卯之吉の行方もわからなくなったお松は海のほうへ逃げ、たまたま商用で来日していたリーに助けられた。
なぜ、お松が首に紐を巻いているのかいぶかしむリー。お松はこのとき、卯之吉のしようとしたことを悟った。「それよりも、いただいた落款をどこかで落としてしまいました」とお松。
【現代に場面転換】
「で、リーという人がよ。お松さん連れて、上海行ったって話だよ」と先輩。
二人は酔い覚ましで山下公園へ。
「もう三十五、六年前かな、片思いの女の子とデートしたんだよ。今日歩いたところはそこ。中華街の店も、食べたものも同じ」と先輩が明かす。
「お前の彼女はついて来てくれなくれも、待っててくれるかも知れないぜ」
そこにものすごい突風。海からの風に乗って飛んできたなにかが後輩のおでこに当たった。見ると落款だった。
後輩「待っててくれるかなあ」
先輩「心配するな。おでこに『まつ』と書いてあらあ」
感想
お松と卯之吉の、口に出したくてもどうしても出せないその思いの深さ。中国人リーの、自分の故郷・上海への思いから、お松にとっての横浜がいかに大切かを理解する、その心の大きさ。
迫真の語り口に、聴いていて心が震えました。
そして『純情日記横浜篇』の後日譚を間に挟む展開はまさに驚異。江戸末期と現代がリンクする、そのストーリーテリングの妙!
喬太郎さんの天才ぶりを証明する、奇跡の大傑作と断言するしかない大傑作!
実はこの噺の面白いのは、喬太郎さんのこれの連作のような作品『純情日記横浜篇』というのがあって、実はこの噺にでてきた渡辺という主人公が、この作品の先輩だったと言う話。
気になる人は『純情日記横浜篇』のあらすじをチェック!
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