柳家喬太郎の新作落語『路地裏の伝説』をご紹介。
この噺はノスタルジックな話。子供ものころに都市伝説として近所で語られていた「風邪ひくなおじさん」の正体とは?
『路地裏の伝説』のあらすじと感想
父親の一周忌のために大宮の実家に帰ってきた50代なかばの男。地元に住んでいる子供の頃からの友達も何人か集まり、線香をあげてくれた。みんなで発泡酒を飲みながら小学生の頃の話をする。
実はこの界隈では当時「風邪ひくなおじさん」という変なオジサンが町に出没していた。このおじさんは小学生たちから恐れられていた。ただ、ラッキーなのか残念なのか、男はそのおじさんに出会ったことはなかった。
風邪ひくなおじさんは塾帰りの小学生に対し、向こうから急にやってきて、すれ違いざまに「そんな格好してると、風邪ひくぞ!!」と大声で叫ぶ。
ただ「風邪ひくぞ!!」と、大きな声をだすだけで、なにか危害を加えるとかではもちろんないのだが、小学生の間では恐れられていた。
飲み会も終盤になると父親のかたみの話になった。なにかないかなと、実家の押し入れをあさると、父親の日記が見つかった。
本人がもういないことをいいことに、興味本位でみると、そこにあることが書かれていた。
「まったく、最近の子供は秋が終わったにもかかわらず、相変わらず半袖、半ズボンでいる。あんな格好をしてたら風邪引く。親はなにをしてるんだ」
それを見て男は気づいた。噂の風邪ひくなおじさんは自分の父親だったのだ!
その後、家をでてさくら水産に場所を移して飲んだその帰り。男は小学生とすれ違う。
大人の低い声で小学生が言った。
「あんまり飲みすぎると、肝臓こわすぞ」
男「ん?・・・(笑)」
感想
都市伝説の裏には父親の子供への愛があった『路地裏の伝説』
都市伝説に加えて、実家の押し入れからは日記の前に平凡パンチ、スコラ、GOROも出てきて、喬太郎さんお得意の1970~80年代あたりへの昭和ノスタルジーが満載。
都市伝説の裏には父親の子供への愛があった、という展開の見事さと、不思議な余韻を残すエンディングに、痺れます。
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