初心者のために落語のあらすじをご紹介!
今回は季節は夏の落語ですが、冬のみかんを追い求めるという噺です。いまは作物の生産・保存技術によって1年を通して果物や野菜を食べることができます。でも江戸時代はもちろん、そんなことは夢のまた夢。
大金持ちの商家の若旦那が、ムリ言うんだねえ、これが悲喜劇の始まり。
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『千両みかん』のあらすじと感想
“気の病、やがて番頭へ。季節外れのみかんは、ダイヤモンドだね〜♫”
.人情噺. .みかん.
簡単なあらすじ
夏の暑い盛り、呉服屋の若旦那は病に苦しんでいた。明日にもどうにかなってしまうような状況。しかも医者が懸命に診察しても原因がわからない。おそらく気の病だろうと医師は言う。
心のつかえや悩みを解決すれば回復すると言うのだが、父親がどんなに息子に問いかけてもこれといった返答がない。天塩にかけ育てた大事な跡取り息子の衰弱する姿を見て、切羽詰まった思いで番頭を呼び出す。
主人は鬼の形相で番頭に命令する。
「いいか、とにかく息子の心の内をお前が聞き出せ。息子が死んだら、お前は主殺しの罪でハリツケだ!」。
ハリツケにおびえる番頭、なんとかしなければと若旦那にしつこく問いかけるのだが「どうせ叶わないこと」となかなか話してくれない。
「ひょっとしたら好きな人でもできたか? 仕事のことでなにか悩みか?」あらゆる想像を張り巡らし、しつこく聞く番頭に若旦那もやっと思いをとろした。
ためらいがちにぼそっと発したその一言は「みかんが食べたい」だった!
「え、みかんが食べたい?」
あまりの発言にあっけに取られた番頭は、なんだそんなことかとみかんを用意することを安請け合いする。
ところが季節はこの暑い夏の真っ盛り。みかんは冬が旬の食べ物。江戸中どこを探してもあるはずもない。焦って安請け合いした番頭は冷静にその事実をかみ締めて呆然とした。用意できなけれハリツケだ。
真夏にみかんを探し求めて、もはやパニック状態で右往左往。なんとか当たれるところを当たった末、神田の大きな果物問屋にたどり着いた。
その果物問屋は冬場に採ったみかんを貯蔵していた。みかんを求めて山積みになった木箱をどんどん開ける。だが夏の暑さにやられて傷んだり腐ったりしているみかんばかり。ついに最後の一箱。そのなかから奇跡的に傷んでいないきれいなみかんが一個だけ見つかった。
助かった。そう安堵したのはつかの間、果物問屋の主人が恐ろしいことを言う。
「そのみかんは千両で譲りますよ。なんせ腐る前提で最高級のみかんを貯蔵していたんでね。そのくらい払ってもらわないと」
「千両⁉」
あまりの値段にあっけにとられた番頭は自分一人の判断ではなんともできないと、一度店に戻って旦那に報告する。しかし千両と聞いても大旦那はうろたえるどころか「息子の命が千両で助かるなら安いこと」と二つ返事。
千両で買ったみかんが腐ったら困ると番頭は急いでみかんを若旦那のところにもっていく。その苦労を知ってか知らずか、若旦那は美味しそうに十房ある内の七房をぺろりと食べた。そして残り三房を両親とお祖母さんに渡してくれと番頭に渡した。
番頭はその三房をじっと見つめた。「十房で千両のみかん。つまり三房の値段は三百両。このみかんを売れば三百両手に入る!このままここで奉公してても、三百両なんて金は絶対手に入らない」
番頭はみかん三房を持ってどこかへと逃げしてしまったのであった。
時間がない方へ超要約こんな話
どうしてもみかんを食べたいと悩み、寝込んでしまった若旦那。番頭は夏にあるはずのないみかんをなんとか探すが、その値段は法外な値段「千両」だといわれる。
若旦那は千両で手に入れたみかんのうち七房食べ、残り三房を両親と祖母に渡してと番頭に頼む。千両で十房、ということは、いま番頭の手のなかにある三房は三百両。ここで番頭、みかん三房を持って失踪。
落語好きの視点
可愛そうな番頭、欲に目がくらんだという解釈もありますが、パニック状態が続き、もうわけがわからなくなってしまって失踪に至ったのだと、わたしは思ってます。
- みかんを探せなければハリツケ
→怖ろしい〜 - やっとの思いで見つけたみかんは一個でなんと千両
→ひえ〜ご勘弁を、あまりに法外 - 主人に千両などと告げれば、バカと怒鳴りつけられるに決まってる
→怖ろしい〜 - 思い切って千両と口に出したら、主人から安いという一言
→金持ちの金持ち過ぎる返答にびっくり - 若旦那は七房つまり七百両を惜しげもなくペロリ
→金持ちにはもう付いていけない - 自分の手のなかの三房は三百両
→もうなんにも考えられない
ここまで揃ったら、誰だっておかしくもなるでしょ?
根はまじめな番頭です。
若旦那の気の病はみかんで治りましたが、今度はみかんで番頭が気の病に陥った!
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