現在落語家の中で一番多い亭号は「三遊亭」
その三遊亭の開祖は三遊亭圓生ですが、三遊亭の名を更に高めたのが「三遊亭圓朝」と言われています。
三遊亭圓朝は江戸〜明治時代に活躍した落語家で、現代でも落語家の得意演目、また名作として名高い「芝浜・死神・鰍沢」を創作した人物なのです。
三遊亭のみならず、落語の人気を決定づけたと言われる「三遊亭圓朝」についてご紹介します。
三遊亭圓朝の経歴
三遊亭円朝全集
▼三遊亭圓朝の簡単な人生
- 1839年に江戸・湯島に生まれる。
- 父親の音曲師・ 橘屋圓太郎の影響で落語家になりたいと思う。
- 1845年に初代橘家小圓太の名をもらい、初高座は寄席「土手倉」。
- 1847年に父親の橘屋圓太郎と同じく、二代目三遊亭圓生の元で修行。
- 1849年に二つ目昇進。この頃から昇進制度はあったのですね。
- 1851年に母と兄に落語家になることを反対されたという話もあり、なぜか浮世絵師で有名な「歌川国芳」に弟子入りする。
- 17歳の時に落語家に復帰する。
- 1855年に圓朝の名で真打昇進。安政2年なのであの安政の大獄の3年前。
- 1872年(明治5年)に芝居噺から普通の落語に転向する。
- 1889年に圓朝が初代・三遊亭円生の追悼のため、木母寺に「三遊塚」に建立した。
- 1893年(明治26年)に渋沢栄一と一緒に、静岡の徳川慶喜の邸を訪れて落語や講談を披露。
- 1900年(明治33年)8月11日に死去。
三遊亭圓朝の実績と功績
三遊亭圓朝は落語人気を復興させた立役者。精力的に活動し、多数の新作落語を生み出し、後世に残していてきました。そんな圓朝の実績と功績を紹介します。
❶『芝居噺』で名をあげる
芝居噺とは噺のクライマックスで、様々な道具や背景画を使って芝居のように見せる噺。三遊派のお家芸で、歌舞伎の雰囲気を盛り込んだ作品群。
▼芝居噺の演目
- 『塩原多助一代記』
養父の角右衛門に育てられた塩原多助が苦難を乗り越え炭屋(炭を扱う商売)として成功する出世話。 - 『菊模様皿山奇談』
将軍から頂いた菊模様の三十三枚の皿を割ると罰が与えられた。ある時、当主の男がお千代に振られた腹いせに、皿をわざと割りお千代に罪をかぶせた。そこから始まる連続殺人などが絡むお家騒動。
これにより若き日の圓朝は人気を得たが、その派手さと周りからの嫉妬から妨害されることもあり、次第に芝居噺を封印し人情噺や怪談噺にベクトルが向かうようになった。
❷『人情噺』で芝浜・鰍沢を生み出す
現代でも人気演目として君臨する「芝浜」「鰍沢」
これらを創作した功績と、その話を文章や口述により一門に継承したことにより「三遊派の人情噺」といわれるほど評判になりました。
▶名作落語のあらすじ紹介!
落語好きなら誰もがしってる『芝浜』『死神』『鰍沢』。その噺のあらすじと、創作された時の裏話を紹介します。
●芝浜の簡単なあらすじ(詳しくはコチラ)
ダメ男は仕事もせず大金を拾って酒浸り。妻は心をいれかえてほしいとあえて大金を隠す。旦那は夢を見たんだなと心を入れ替え仕事に励む。その3年後、妻はついに本当のことを打ち明ける。旦那は妻の嘘をゆるし、感謝する。
●死神の簡単なあらすじ(詳しくはコチラ)
現れた死神に呪文を教えてもらい商売を始めると儲かりまくった。いい気になった男は呪文を教えてもらう代わりに死神と交わした約束を破ってしまう。それを知った死神は怒り、再び男の前に現れる。
●鰍沢の簡単なあらすじ(詳しくはコチラ)
身延山の久遠寺のお参りにいくために鰍沢にいく途中、吹雪で立ち往生してしまったと男。しょうがないので近くの民家に助けを求めると、優しく招き入れた。そこには山小屋にはふさわしくないほど美しく若い女性が。
ラッキーとばかり思っていたが、その夜に女は男を殺そうを毒入りのスープを飲ませる。それに記事いた男。そして逃げる男を追う女。吹雪の中で逃走劇が始まるサスペンス。
▶実は芝浜・鰍沢は三題噺として作られた⁉
そもそも三題噺とはなにか。
三題噺は客席のお客さんから3つの適当な言葉、例えば「寿司」「エレベーター」「野球」などをもらい、その3つを話の中にいれて、即興で落語を作るといったもの。
元々、初代三笑亭可楽が始めたといわれていて、そのが評判となり様々な落語家が余興などでやるようになったいわれています。かつて笑福亭鶴瓶と桂ざこば出演でその三題噺を題材としたテレビ番組「らくごのご」も作られました。
ちなみに『鰍沢』は、幕末の頃に木場の豪商のお座敷で即興で作った噺で、 圓朝二十代の作品であると言われています。
❸『怪談噺』による連続物の開拓
幕末の頃になると寄席でトリをとるには長編の人情噺ができなければなりませんでした。理由は当時寄席15日間で毎日お客さんに来てもらうため、連続ものの人情噺で引っ張っていたからでした。
そこで有効だったのが連続物の『怪談噺』
そもそも怪談噺というのは、単に幽霊や妖怪が出てくる話ではなく、人間の汚れた恥部である、恨みや嫉妬を描き出した作品群です。
幽霊になってまで恨みをはらす、または死んでも会いたいという恋心を募らせるの想いなど、深い情愛・執念が一つの文学作品のようになり大いに人気になりました。
▼長編怪談噺三部作
『牡丹燈籠』『真景累ヶ淵』『乳房榎』
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